彼岸とは


ストンと秋の底に落とされた。あれだけ苦しめられた永い夏はどこへ消え去ったのかしらと首を傾げながら冬支度の心配をしている。1℃下がるだけで大違いだったのに、いきなり10℃も下がってもらっては体が追いつかない。木綿の服をいくら重ね着しても埒が明かず、押入れの衣装ケースから冬物を引っ張り出す。それでも足りずに電気毛布と電気マットも準備。貼るカイロと手袋は必須だ。昼と夜で夏服と冬服の着替えとは厄介なもの。蓮華寺の鬱蒼とした森の中でひっそりと咲く数知れぬ彼岸花を思い描いた。15分も歩けば行ける場所だけど、今はそれすら叶わぬ夢。その半分の距離にある公園の白い彼岸花さえ遙か遠く思える。