記念とは
ひどく疲れている朝。胸がざわざわしてうまく眠れぬ夜が明けた。憑かれたように机に座り、思いつく限りの人たちに母死去の報告を綴った。携帯に電話すれば済むことだが、何かひとつ距離を置きたかった。便箋を選んでいて思いつく。実家の庭のレモンの木が描かれた母の個展の絵葉書に紙を貼って淡々と、そしてお礼の言葉を添えて。師走の街をカツカツ歩いて葉書を出し、ある洋品店の前で足が止まる。着物の生地でパッチワークしてある枯茶色のパーカーに触れた途端、感じるものあり。即決お買い上げ千円也。うれしくて早速いつもの店に着てゆく。マスターとMちゃんからサーモスの名前入り祝還暦タンブラーを頂いて吃驚仰天。涙目になる。