白夜とは
四年前の夜明け前に引き戻される。携帯に着信、うすうす予期はしていた。滅多にかけてこない母の声がふるえている。父がもう危ないから帰って来るように、喪服も持ってこいと。その日は外せない用事があって、次の日早朝、電車に乗ったが間に合わなかった。思えば、あれからぐるりと生活が一変。気力も体力も及ばない苛酷な試練の連続にプチンと胸の奥がはじける音を聞いたのは重い荷物を担いで品川駅のプラットホームを歩いている時だった。少しずつ倒壊していく精神をつなぎとめてくれていたマティが二年前に逝ってしまい遂に崩壊した。あの柔らかなぬくもりが命綱で、それからのわたしは抜け殻だ。笑うことも泣くこともできない。