暖簾とは
中華屋の灯りが消えた。数日前まで元気に立ち働いていた奥さんがくも膜下出血で入院。還らぬ人になる。さみしいだろうな。マスターのかなしみを思う。くれぐれもアルコールに溺れないようにと願う。人がひとりいなくなるという現実のおそろしさ。コップに挿した赤い花、ビールに付けてくれた大盛りのメンマ、油揚げに納豆を詰めて網で焼いたつまみ、わたしの日光アレルギーの心配をしてくれ、年末にはカレンダーをくれた気の強い人。あの店の風景はもう見ることができない。いつもの店で訃報を聞いて、酒が醒めた。家に帰って合掌。ゆるやかに傷みが押し寄せてくる。ありがとう、お疲れさまでした。