観察とは
ドキュメンタリー映画はきらい。記録映画と云いながら撮影者の思惑がちらついて素直にヨロコペないし、ひんやりと哀しめない。想田和弘監督『港町』2018年を見た。瀬戸内の小さな港町で暮らす人々に明け透けなまでに残酷なカメラを向ける。男たちは抗い難い現実を見つめ、女たちは童女の如く虚飾の世界に逃げ込む。したたかに魚をくわえて走り去るのら猫。そこに居続けるために諦めと怒りをひた隠し、気の遠くなるような孤独を生きる人たちの空虚で皮肉な瞳は甘い死だけを夢みている。「泡沫夢幻、空前絶後」という宣伝文句は作り手の驕慢。死ねない苦しみと闘う人たちを「儚い」と云っては身も蓋もない。奇蹟はどこにでも転がっている。