生まれ変わりとは
ひと月ぶりの銭湯。思いがけない瑠璃色の湯槽はしびれるほど熱くなく、仄かな薬草の香りが鼻をついた。この寒さで珍しく混んでいる。わたしを含めて5人というところだが。一人では心細くてたまらない。おばさんたちのおしゃべりがやがて遠くなり、瞑想に耽る。カランからほとばしる湯に見惚れていると体の奥に溜まった澱のようなものが流れていく。小一時間も経つと乾燥しきった肌がつるつると潤い、頭のてっぺんからつま先までぴかぴか光っている。元のしわくちゃなギズモに戻ってがっかりする前に大急ぎで全身にワセリンを塗り、椿油を髪につけるとまるで透明人間。手のひらが青白く透けていた。息を漏らさないよう、忍び足で外へ出る。