音とは
「ドライブ・マイ・カー」を見た。登場人物たちは誰もが一切の感情を内に秘め、どこか謎めいている。敢えて表情を作らないことで(棒読みすることで)それが演技ではなく、どこか深い部分から発せられた声(音)だという。徹底して演技を省くのがこの監督の手法らしい。ドライバーを演じた三浦透子の声がいくつも響いたけれど後半のワンシーンで笑みを浮かべたのは違うと感じた。最も謎めいた妻役の霧島れいかの妖艶さと浮遊感、広島瀬戸内海の風景が約三時間という長丁場をかろうじて救ってくれたような気がする。よく練られた脚本だが、やはり村上春樹を好きになれないわたしがいた。だいたい男の泣き言に付き合ってるヒマはない。