引き出しを片付けていたら富士川の河原で富士山をバックに撮った家族写真が出てきた。高校一年の時に校舎の片隅から連れ帰った白猫ドロンが一緒に写っているから、わたしが二十歳そこそこの頃だろう。まだ若い父と母と兄、お気に入りのカーディガンを着たわたしはどれもそっぽ向いてる。こんな正月があったことすら忘れていた。その場所は今はもう水の底。ドロンはおつむの弱い猫で、掘り炬燵で寝ていて灰の中に落っこちて足の裏に大火傷をした。最近よく生まれ育った家の夢を見る。ゆるい坂道の途中の小さな家。父が退職して引っ越したので人手に渡ってしまったが、まだあるんだろうか。記憶の中の人々は皆きれいな顔をしている。
記念写真とは


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