気概とは


明け方の暴力的な風の音。不吉な予感がして早まる鼓動をおさえられない。橋本治著『窯変源氏物語』のことを考えていた。閉館した青山円形劇場で上演した「ひかる君」の脚本を書いていた時に3分の1ほど走り読みし、光源氏の一人称で書かれた物語の凄まじい求心力に圧倒された。なにしろ全14巻、これを書き上げるには相当の体力が必要だ。読む方は寝転がっても電車の中でも読めるけれど、やはりかなりの集中力がいる。当時はとにかく時間がなくて力強い文章のイメージを追いかけた。こんな大人になりたい、そう思わせてくれる数少ない明晰な頭脳と反骨精神の持ち主。ふと中上健次氏を思い出したのは同世代だからというだけではない。