夕焼けとは
西の空が燃えている。こんなに深い赤色を忘れかけていた。北海道のアパートの窓には荒涼とした原野に並ぶ白樺の向こうに沈む大きすぎる火玉のような太陽が、明大前の自動車学校の練習コース越しには不揃いなビル群とオレンジから葡萄色に変わりゆく空が、小田急線代々木上原の駅のホームの端に行くと緩やかな丘陵に建つ瀟洒な邸宅が唐紅に染められていく。これがわたしの寂しい夕陽スポットベスト3なのだけれど、それはもう二度と見ることはない。以来、それらを超える夕陽に出会うこともない。暗い青春時代に置いてきた風景。東京の空は益々狭くなり、夜空はおろか、青空さえ窮屈にゆがんでいる。首が痛くなるほど見上げても虚しいだけ。