時の重さとは
最初にもらったのは花束だった。結婚して初めての誕生日「何にしていいか分からなくて」と渡された赤と紫の花束。その気持ちがうれしかった。それからモンブランの万年筆やアンティーク調の卓上ランプや木とガラスのアクセサリー入れや猫のショルダーなど、さぞや考え抜いたであろう贈り物に囲まれていると数十年の重みを感じる。猫の飾り付き眼鏡チェーンは実家で大掃除した時にうっかり捨ててしまって悔やんでも悔やみきれない。夕方ペットショップへ行くと交差点に面した焼き鳥屋の建物がスコンと消えてなくなっている。住居と事務所になるらしい。老朽化による立ち退き。70歳を超えたマスターはもう焼き台の前に立つことはないだろう。