白猫とは


ミミコ、9時半。以前はあれほど怯えた目をしていたのに、最近はとても偉そうにしている。50年前なら女中が三人もいる大金持ちのお嬢さま。わがままで世界は自分中心に回っている。いつも人を軽蔑した目つきをしていて態度がでかい。わたしはいちばん下っ端の女中、らしい。お口に合わない食事には手もつけず、ぷいっと出て行ってしまう。それがこのところ育ちの悪い醜男に付きまとわれて逃げ帰ってくるようになった。ひどく人相の悪い太った色白の中年は夜中に甘ったれた声で懇願している。ミミコは息を潜めて寝たふりをする。女中は外に出て冷ややかに「お嬢さまはおやすみですからお引き取りください」と言い放つ。