原風景とは


川の辺りで生まれ育った人間の触覚か。石と砂と水、それがひどく心を落ちつかせる。残り物炒飯を食べて兄の家から実家へ戻る。目を閉じてはだめだ。集配を頼んだ時間までに兄とわたしの所に送る物を箱に詰め、畑の分葱と芽キャベツを採って茹で、土曜日に車で施設へ行ってくれる隣りの奥さんに荷物を頼み、燃えるごみを出し、次に持って行く衣類や写真を掻き集める。名前の分からない菜花の芥子合えと分葱のおかか和えと黒はんぺんのフライでビールを飲みながら、出せなかったお雛さまの代わりにローズマリーとミントを眺めた。ひしひし不安が押し寄せる。