苦行とは


またしても解体工事が始まる。路地のいちばん奥の家だから間に四軒あるとはいえ、朝7時半にトラックが入り、8時前からドタンバタンやり出した。もはや怒る気にもなれない。この家に越してきてから周囲の新築工事や改装工事や解体工事ばかり続く。穏やかに過ごせた日々はごくわずかな気がする。9年前の父の死、それからオカシクなった母の世話、もはや面倒見きれなくなって施設に入居させ、二ヶ月置きに訪問、静岡を往復して実家の片付けに追われた日々、少しずつ体力を奪われて遂に心がパチンと弾けてしまったのは何年前だったか。安らかでいられるように引っ越してきたのに、連日の騒音と無作法な労働者たちに胸を締め付けられている。