二十世紀梨の季節になった。最期に食べたいものを訊かれたら、迷いなくこれだと云える。早稲みかんもありだなと思ったこともあったが、結局これに辿り着く。豊水とか幸水とか他の梨では絶対ダメ。むしろ他の梨ならいらない。子どもの頃に食べた時、頭の中が真っ白になった。瑞々しい香りと上品な歯触り、何より甘くないのがいい。あれから秘事のように憧れてきた。大人になって自分で買えるようになっても、決して手に取ることはない。だって最期の晩餐だから軽々しく食べてはいけないのだ。八百屋であの果敢ない黄緑色を一瞬チラリと見ると少し呆けて薄笑いを飲み込んで足早にその場を去る。今度見かけたら買ってしまいそうな気もするが。
最期の晩餐とは


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