思い出とは


近頃幼少期のことばかり思い出す。何の前兆なのだろう。死期が近い、認知症の初期、でなければよいが。子どもの頃、数珠玉をよく摘んだ。持病で隣町の病院に通う線路沿いの道は数珠玉の宝庫だった。母と一緒に摘んで帰り、お手玉にした。山で摘んだ数珠玉は首飾りにした。季節はいつだったか、手編みのセーターを着ていたような気がするから秋だろうか。自然はいつもすぐ近くにあった。春は土手で土筆やノビル(ノンビルと云ってた)を採って料理してもらい、夏は河原で魚やエビを獲り、秋は里山でイタドリ(イタンドリと云ってた)をポキンと折って食べ、冬はみかん畑で遊んだ。記憶にあるのは、すきっ歯を見せて笑う煤けた顔の小さな女の子。