動き出すとは


日の出前の富士山がいちばん好きだ。何も語らない、ただ悠然と佇む。神々の息づかいすら聞こえてきそうなほど静かに張りつめた空気を吸うと体がふわりと軽くなる。入院中の母は相変わらず元気だが、どこかさみしそうでもある。もう一人で生活するのは無理だ。兄と施設を見学に行く。今後の展望が少しだけ見えてきた。肩の力が抜ける。歩いているとまぶたが自然と閉じてしまう。気絶する一歩手前。まんまるの月を頼りに大量の衣類をゴミに出し、広くなった寒い部屋で葱とマグロの晩酌。