虚勢とは


朝、米を研いでいて思いだす。昨日の映画で煮え切らない森雅之に対して妾の高峰秀子が云う「売れっ子芸者だったお婆ちゃんがよく云うわ。旦那さんの朝ごはんを作るのが女のいちばんのしあわせだって、薪でしょ、木のいぶる匂いはいいもんだって」負け惜しみなのが哀しい。子どもの頃は薪で風呂を焚き、七輪で魚を焼き、掘り火燵と豆炭あんかで冬を過ごした。炭火の温かさは体が憶えている。しかし、わたしは食事の支度をするのがいちばんきらい。平成28年の今も黙って座れば飯がでてくるとカン違いしている男は多い。一日三度のおさんどんに明け暮れる女も多い。薄ら寒い。家族の神話は崩壊しているのに、いつまで経っても昭和が追いかけてくる。