仲春とは
道端の日陰にシャガが咲いていた。漢字で書くと「著莪」または「射干」。小さな頃、遊び場にしていた里山にはシャガと踊子草と山吹がたくさん咲いていた。初夏のイメージだったが、実際は四月だったろう。たわわに咲き乱れる山吹の黄色に圧倒され、暗がりで鮮やかに咲くシャガには恐怖を抱き、可憐な踊子草の蜜を舐めていた。この花や河原撫子を見ると、子ども時代を思い出して胸がチクンとする。清貧という言葉が照れくさいほど皆貧しかった。手編みのセーター、霜焼けの手、裸電球の灯り、すべてがセピア色だ。長く生きすぎたような気がする。今日はいつもの店で初めてメヒカリの塩焼きを食べた。淡白でおいしい深海魚だった。