時代とは


それはよく知ってる光の色。漆黒の闇に揺らめくオレンジの灯りは20Wの裸電球。人々の顔も壁もテーブルも、何もかもが昭和の世界に取り残されていた。その店の印象はよくない。20年も前に一度入った記憶があるけれど、それは間違いなく地下だったから、二階のこの店は名前は同じでも経営が変わったのかもしれない。それはどうでもいい。いつもの店の主が休みの日によく行くと聞いたので入ってみただけ。思いも寄らず広い店内、見るからにやる気のなさそうな男性とケバケバしい化粧の女性の接客、暗すぎる照明、期待できそうな事柄は何一つ見つからない。しかし値段の安すぎる料理はどれもきちんとしている。誇り高い料理人が一人いるのだ。