災厄とは


いるよな、自分のことしか語らない女。いかに芸術的な家庭に育ち波乱万丈な人生であるか、いかに大酒呑みか。自尊心を満足させるのが目的だろうが、根底には卑屈な劣等感がある。ずいぶん昔に何度か見かけた税理士夫婦、とにかく自慢話しか聞いたことがない。そこに息子自慢が加わってさらにしち面倒臭い野郎ども、静かに飲めないのか。店中を席巻して周り、踏ん反り返る姿は醜い。ため息をつく間も無く、五十代男性が19歳の息子を連れてやってきた。カウンターを電話予約して来るとは何様だ?と思ったら、この辺の地主一族だった。やれやれ今日は自慢話しか聞けないのか。刺し盛りをツマミにカルピス飲んでる図体のでかい男の子が阿呆にしか見えない。日本酒一杯で店を出た。