手前味噌とは


いろんなことがわずらわしい。家にいると家事に縛られそうで逃げ出す。近所の店のカウンターでメモを取るのが日課になった。昔話ばかり書き連ねる。子どもの頃、足の裏に湿疹があり、冬になるとひび割れて血が滲んだ。毎日コールタールの匂いがする軟膏をネル布に伸ばして貼り、包帯を巻いていた。隣町の病院に母と通って無駄な治療をしたが、ちっとも不幸ではなく、帰り道にじゅず玉を採っておはじきや首飾りを作るのが慎ましやかな遊びだった。色あせた寂しい道のりが全世界で、その中でたのしみを見つけることしかできなかった時代。ここまで書いて胡瓜の糠漬けが届いた。うん、わたしの糠漬けには及ばない。なんたって100年物だぜ。