はるかぜとは


なんだろう、やたらとお腹の空く日だ。体重計の目盛りは減る一方だけれど。昔、煙草屋だった家の隣りの塀に白黒の八割れ猫がちんまりうずくまっていた。薄汚れた毛並みを気にするでもなく半眼で道行く人々を見下ろしている。しばらく顔を見せなかったが、ふと気づけば後ろにひとまわり大きな黒い猫がいてすこし安心した。もうちょっとの辛抱。今度は忘れずにカリカリを鞄に入れて行こう。春の風が吹いて人々も浮かれ気味。「節分や肩すぼめ行く行脚僧」幸田露伴