友だちとは


今年は梨を沢山もらった。それらは大きくてほんのり若々しい香りがした。そのやるせない甘みは好みではないけれど、朝にひと切れ食べるとぼやけた体がしゅっと引き締まる。『シュトロツェクの不思議な旅』のシュルツ老人の大きなかぎ鼻と針鼠のように小さな後ろ姿が頭から消えない。『ノスフェラトゥ』のラストにちらりと映った時はうれしかった。生真面目に頑に生きる愛すべき隣人、哲学者のようなその瞳、映画の中でしか会えることのない純粋な魂。昨日は友人が梨とひじきご飯と卵焼きを持ってきてくれた。お返しする物が何にもみつからなかったので近所で一杯つきあう。顔見知りの客に二度も声をかけられた。みんな幸福な時間を共有している。