ループとは


にわとりはどこか憎めない。子どもの頃、家に迷いこんだ鶏のピー子は飼い猫たちを押しのけて母の膝に乗り、甘えた声で餌をねだった。ヘルツォークの作品に出てくる動物たちは愛嬌のある姿で皮肉な運命を暗示する。『フィツカラルド』では子豚とヒョウの赤ん坊。『ノスフェラトゥ』では大量のねずみ。『シュトロツェクの不思議な旅』1977年は動物たちがとんでもない登場っぷりをみせる。金持ちになることを夢見てベルリンからアメリカへ渡った主人公たちの旅は無惨な終わりを迎えるのだけれど、そこでは電気の流れるショーケースの中の鶏がピアノをかき鳴らし、器用なダンスを踊り、鴨が太鼓を叩き、うさぎがパトカーのサイレンを鳴らす。滑稽で非情で止まらない。