ひな祭りとは


深い雲の向こうに肌色の光がみえた。悩ましい空と海を眺めながら露天風呂で一時間。すっかり酒は抜けている。朝寝坊の彼らを起こさないよう、そぉっと缶ビールを飲んだ。朝食バイキングは野菜づくし。トマトジュースがおいしい。チェックアウトの後、彼らと別れて実家へ向かう。父の部屋の開かずの扉の奥に見憶えのある段ボール。腰が砕けた。わたしのお雛さまだ。居間に飾ってにやにやする。いつものように雑巾がけをして母の衣類をまとめる。降りしきる雨の中、負けじと隣町の酒屋へ行く。顔を憶えていてくれた。黒はんぺんフライでビール、まぐろブツで焼津の酒。静岡弁の顔見知りもできた。近所の家に挨拶をして家に戻る。念願叶って力が抜けた。