盆踊りとは


ヒグラシの鳴き声を聞いたのは五日前。父の墓参りで夕暮れの山道を登っている時だった。脳みそを締めつけられて自分を見失い、何度も蹴つまずいた。ヒグラシの大合唱はケチャに似ている。東京ではまだ秋の声が聞こえない。台風が近づいているせいか蒸し暑さで街が歪んで見えた。夕方に家人と大久保駅で待ち合わせて皆中神社へ。「はち」の屋台でビールと谷中生姜をもらい進んでいくと、こぢんまりとした境内で浴衣姿の大人や子どもがぎこちない踊りに夢中だ。ほほえましい町のお祭りにうっとりする。招き猫みくじを買ってもらって店へ移動すると焼きそばの仕込み中。屋台の味と日本酒がミスマッチでおかしい。猫みくじは「吉」。