蒼白い空とは


読書と云えば山田風太郎の『戦中派虫けら日記』約600頁のちくま文庫を繰り返し読んでいる。昭和17年、戦況が悪化する中、飢えと闘う孤独な青年の日記には「蒼」という字が頻繁に登場する。ざっと挙げても蒼空、薄蒼い大空、薄蒼い黄昏、蒼白い大気、爽やかな蒼い光に溢れている朝、蒼白い月夜、蒼い顔、薄明るい蒼みを帯びて澄んでいる、蒼茫と暗い、と枚挙にいとまがない。「青、蒼、碧(あお)」の違いと云えば「青」はうすい藍色で若いという意。「蒼」は草の青、深青色で年老いたという意。「碧」は青い石、みどりとも読む、青緑色。二十歳の青年は蒼い空に自分の心を映したのだろうか。英語だとpale(青白い)か?副題は「滅失への青春」